続き
前回の海外旅行の続きですが、うしろで押しつぶされている客がいるというのに、このうえまだ客をひろうつもりか、まだ指を一本立てています。
そしてまた止まった。
こんどは若い娘、ちょっと美人が乗りこんできた。
でもそれは前の席へ、運転手がわざわざドアをあけて乗せた。
客の容姿によって、彼は前と後ろに客を振り分けているのか。
心なしか、運転手の大きな体は先刻よりも、娘のほうへ近づいたようです。
その彼がまた一本の指を立てています。
まだやる気か/こんど止まったときは、おじいさんだった。
おじいさんなら、娘との間を邪魔されないと踏んだのか。
こうして、運転手を入れて都合七人の人間がなんとも不思議なアンサンブルで、メキシコシティーの中を走り回ったのです。
まずおじいさんが降り、そのあともう一人年増の厚化粧が前に乗ったが、うしろはまた一人ずつ降りていった。
最後に隣のおばさんが降りて、うしろはまた初めと同じ、私一人が残った。
やおら運転手が、「○○ホテル?」と聞いた。
そうだ、と答えると、運転手、急にスピードを上げた。
そしてホテルに着いた。
降りると、決まったもののように、右手を出した。
その手の上へ、強く、一ペソをピシリッ、と打ちつけるようにして投げてやった。
何か言おうとしたが、それこそこれ以上むけないと自分でも思うほど目をむいてやった。
そしてにらみつけてやった。
とたんに、彼の目がたじろいだ。
ぶつぶつ言いながら、しかたがない、とあきらめたのか、ハンドルを握り直して走り出した。
こういうことはしょっちゅうだった。